【夏休みの自由研究】奇形化したクローバーのつぼみの観察

やっほー小中高生のみんなー、宿題は終わったかい? タイトルのとおり、クローバーを育ててたらつぼみから葉が生えるという奇形化現象が起きたので観察してみた。 で、時期的にちょうど夏休み期間だったし自由研究のテーマとしてもぴったりだったから、レポート形式にしてまとめてみようと思った。 たまには普段と違うテイストのエントリを立てるのもやってみたかったし。

毎年夏休み時期になると工作したくなったりするし、実際先日にもアイテムを作ったりしたけど、それってのも自由工作・自由研究なら自分でテーマを決めてレギュレーションの範囲内なら何をやってもいいっていう自由度があって楽しかったからというのが大きいね。 決められた課題をやらされるよりは自分で決められるってのがいい。 大人になってからは毎日が自由研究みたいな感じだし、ブログも言ってみれば普段の自由研究の結果・経過報告みたいな側面もあるわけだけど、ならば逆にブログで形式ばった自由研究のレポートを書くのも面白いかなというのが本エントリのもうひとつのテーマ。



というわけでここまでが前置き、以下が本題のレポート。 本レポートはCC BY-NC-SAライセンスにて公開します。 詳細は文末の表示を参照してください。



奇形化したクローバーのつぼみの観察およびその変異についての考察


要旨

シロツメクサ(以下「クローバー」)のつぼみから葉が生える変異体(以下「観察対象」)が生じたので、その経過を観察することにした。 通常、クローバーのつぼみは複数の花冠・花弁が集まった構成となるが、観察対象のつぼみでは花弁と葉が混在し、花弁の一部が葉に置き換わったような構成となっていた。 つぼみに生じた葉は、茎から分岐した正常な葉と同様に、ある程度の長さになるまで葉柄を伸ばしつつ成長した。 観察対象は、発生以降1ヶ月ほど成長を続けた後、根本側から徐々に茶褐色に変化して枯死に向かい、通常のつぼみと同様の経過を辿った。 つぼみに花弁と葉が混在する以外の異常は認められなかった。


観察内容と観察結果

以下の観察対象を1ヶ月強の期間に渡り適宜撮影することにより観察した。 観察対象と観察機材を固定しておくことが出来なかったため、定点観察は出来なかった。


観察対象

関東圏で一般的に自生しているクローバーを採取して、自宅にて栽培したもの。 詳細な品種・分類は不詳。 四つ葉や五つ葉など、4枚以上の小葉を持つ葉をつけることが多い多葉型の個体。

栽培環境は、日中は日差しの入る窓際・夜間は電球色LED光源下に置き、1日あたり朝晩2回潅水・朝1回葉水を実施。 観察期間中に肥料等の追肥は行っていない。


観察結果

観察期間は2017-07-21/2017-08-24。 奇形化したつぼみを発見した日から、枯死しはじめるまでの期間、観察を行った。 以下はその経過。 (フルサイズは画像のリンク先で閲覧可能)

写真 備考
2017-07-21
観察対象となる、奇形化したつぼみを確認。
つぼみが形成されるはずのところで、花弁と葉が混在して生じている。
また花弁の数も本来つぼみに形成される数と比べて少なくなっている(つぼみ全体が小さい)。
2017-07-24
つぼみから生じた葉は、茎から生じた葉と同様に小葉が大きくなり葉柄が長く伸びる。
2017-07-26
新たな花弁が開くと同時に、古い花弁が朽ち始める。
また新たに葉が形成され数が増えていく。
2017-07-28
2017-07-31
葉の数がさらに増え、葉柄が伸び続ける。
2017-08-02
2017-08-05
これまでに生じた葉は成長を続けるが、新たな葉は生じなくなる。
2017-08-07
2017-08-08
花弁が全て朽ちる。
観察開始以降、葉の数は増えたが、花弁の数は増えなかった。
2017-08-10
2017-08-12
葉の成長が止まる。
葉の大きさと葉柄の長さの変化が少なくなる。
2017-08-14
2017-08-21
外側に生じた小さい葉から徐々に黄変し始める。
同時に、つぼみ全体を支える花柄も黄変し始める。
2017-08-23
花柄と葉の黄変が進行する。
2017-08-24
花柄から水分が失われて硬くなり、茶褐色になる。
枯死し始める。
これ以降はつぼみ全体が枯れていくことが見込まれることから、この時点を以って観察終了とした。

このように、つぼみから葉が生じた点を除くと他に異常はなく、発生から枯死までは典型的なクローバーの葉・つぼみと同じ経過を辿った。



考察

今回観察対象としたクローバーは、4枚以上の小葉を持つ葉をつけることが多く、過去には五つ葉・六つ葉などを生じたことがあった(付録1)ほか、つぼみの花柄二本が融合した状態で伸びる帯化が生じたこともあった(付録2)。 これらのことから、観察対象は奇形化しやすい、つまり形態形成に異常を起こしやすい個体である可能性が考えられる。 観察対象と同様の環境で栽培している他の園芸品種のクローバーでは形態形成に目立った異常が起きないことからも、環境要因による異常よりも、この個体に特有の形質である可能性の方が高いと考えられる。

一方で、多様体を生じやすい個体でありながら、つぼみから生じた葉はすべて小葉が3枚の正常な葉であり、多様体が一切生じなかった点が興味深い。 過去の観察から、多様体は日当たりや栄養状態がよい場合に生じやすいという傾向が見て取れたが、つぼみから生じた葉はすべて一本の花柄を共有した状態であることから通常の葉よりも栄養状態が悪くなっていることが予想され、それにより多様体を生じる余地が無かったのではないかと考えられる。

今回は外形的な観察のみを行ったため、異常が起きる要因や機序についてははっきりしない。 種が生じる個所で葉が生じたという状況から、本来種子として形成されるはずの組織が、その途中で異常により"発芽した"ような状態になった可能性について考えたが、つぼみからは発生した葉はすべて本葉で、子葉は発生しなかったことから、この可能性は否定されると思われる。

一方で、花弁の一部が葉になったという状況から、形成段階の途中で花の原基が葉に変異したと考えたところ、花弁や雄しべなど花の組織の形成や奇形花の形成過程を説明するABCモデルと同様のモデルによって今回観察した異常の形成過程も説明可能ではないかと思われる。

いずれにせよ、今回観察した異常はホメオティック変異ではないかということを暫定的な結論とし、植物形態学等の分野の知識を得ることによって理解を深めることを今後の課題としたい。


付録

付録1.クローバーの多様体

今回の観察対象とは観念的には別個の株ではあるものの、観察対象はこの株より挿し芽によって株分けした個体であるため遺伝的には同一の個体となる。



付録2.帯化したクローバーのつぼみ

付録1と同様に株分けした株。


著作権表示

(C) 2017 ultimei

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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